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ジャックの暴走 




こないだの「ジャックの妄想」の続き・・・・・



(注:ナリは私達が先日お客さんを送った時に
「シーーー!」と言って騒いでいたことを何も知らない、
ということを最初に言っておきます。)






1月28日   ナリとジャック
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ナリが二日酔い&寝不足の中、買い物袋を両手に提げて
ミナミの町を歩き、ふらふらと五ツ星ビル・エレベーターにたどり着いた。
ジャックの店のドアが開いていた。



 
「ちょっと」、と声をかけられ、振り向くとジャックが立っていた。
「ちょっと、こっち来てくれるかな」
ジャックは何か覚悟を決めたような表情で、ナリを見下ろしている。
ちっとも怖くはないが、楽しそうな話ではなさそうなのは間違いない。

「えっ・・・・・はぁ。」
「入って」 「はぁ。」

うながされるまま、ナリはジャックの店に、初めて足を踏み入れた。
カウンター端に座っている男は、振り向きもせず背を向けたままだ。

「今から、聞こえるかどうか聞いといてほしいんやけど」
と言って、ジャックはナリを残したまま外に出て、ドアを閉めた。

ゆっくりとドアが閉まりかけてゆくのを、
最後はジャックが外からイライラしてドン、と閉めた。

これは一体どういうことだろう?とナリは考えるが、
頭が重く思考がうまく回らない。二日酔い・・・。

しかしジャックは今から何を言おうとするのだろう。
あ~~!!とか、ぎゃ~~!!とでも叫ぶのだろうか。
ナリが一瞬のうちに思った時、外側から何か聞こえた。

「シィィィィーーーーー!!!!!」




                 「??????・・・・・シ?」
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再びジャックが店に入ってきて、「聞こえたか」と言った。
ダニエルが笑いのような、フッ、という息を吐いた。
「・・・・・・なんか、・・・シ、って聞こえました・・・」


「聞こえたか。そりゃ聞こえるだろう。
外からは何も聞こえないと思ってるか知らんが、
こうしていつも中からはしっかりお前達の声が聞こえている。
言うとくが、このフィルムを張ったのもな、前の駐車場が出来て、
眩しいから張っただけであって、お前達のために張ったわけじゃない!
勘違いして騒いでるようやけど、あんまり調子に乗ってたら」

ジャックは、別人格がのりうつったかと思うような攻撃的な早口で言い、
そこで言葉を切って大きく息つぎをして、再び口を開いた。

「花火の時は黙っておとなしくしてやったけどな、
子供の喧嘩じゃないんやからな、もうええ加減にしとかな、
こっちも・・・こっちも、そんなに気が長くないからな!」

ダニエルのカラン、という氷の音が響いた。
ナリは両手に荷物を持ったまま、あっけにとられてジャックを見ていた。

こんなに近くで長い間ジャックの顔を見、
声を聞くのは初めてだった。

しかし、なんで外からの雑音を表現するのに、
「シ」の音をセレクトしたのだろう。
こいつの精一杯の声は、「シ」なのだろうか。

「はぁ・・・」
「お・・・お前らは・・・いつもいつも・・・このオレを・・・」
「もうええ」
初めてカウンターのダニエルが、前を向いたまま言った。

それをきっかけにナリは、
「もう行っていいすか・・・?」
「行け」、とジャックは手で追い払うようにして、首を振った。
ナリはふらふらと3階に上がって行った。






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何や今のは???
クレームには間違いないけど、
結局何を言いたかったのかようわからん・・・。
「シ」と言ってたけど、かすかに聞こえただけで、うるさくはなかったしな。
フィルムがなんちゃらなんちゃら・・・
ウチのせいではないとか。負け惜しみか?
そう言えば、さっきママが店に来た、と言ってたけど、
ママにも同じことをしたのだろうか?
「ジャックに拉致監禁されたぁぁ」~と、ナリはすぐにママに電話した。








1月28日 PM17:30   ダニエル


オレはジャックにとって唯一の友人だ。
昔から神経質で変わった男だが小心者で、なかなか旨い酒を作る。
そういえばここ2年ほど、
上に引っ越してきた店のことで胃が痛いと言っていたが、
今日ジャックから突然、頼みがあると呼び出されて来た。

着くなりヤツは、自分は外に出て今から言うことを
中から聞こえるかどうか確認してほしい、と言う。
なんじゃそら。

それよりも水割りでいいから酒を一杯作ってくれよ、
とオレは言ったが、ヤツは何かに追われるように、
「今、今すぐだ、早くしないともうすぐヤツらが来てしまう!」と言って、
ドアを閉めて外に出ていった。

ドアのフィルムの隙間からヤツが口を「イ」の形にして、
こちらに向かって何か言ってるのが見えた。
オレは見てはいけないものを見てしまったような気がした。

ジャックはドアを開け、「聞こえたか」と言うが、何も聞こえちゃいない。
「おかしいな。もう一回、しっかり聞いてくれ」
と言って、ヤツはまた外に出て行った。

やっとヤツが無声音でシィィィー、と言っていることが理解でき、
それならもっと力を入れてやらないとこっちには聞こえない、
とオレは指導し、何度かそれを繰り返していた。

途中、慌ててヤツが戻ってきて、エレベーター前に女が来た。
3階で止まり、女が再び降りてきて立ち去った後、
またシィィィー、の練習をして、今からオレが話をする間は
ここに座っているだけでいいからいてほしい、と言われた。
ジャックは男か女かよくわからないヤツを呼びつけ、
こういうやりとりがあったわけだ。

オレが見た限り、口を半開きにした男?は、
ジャックの話を半分も聞いていなかった。

ジャックが「ありがとう、ダニエル。たすかった。
本当にあいつら、おかしいだろ、アハハハ」と乾いた声で笑いながら
グラスを拭きだしたのを確認して、オレは帰った。








※ このお話はフィクションであり、実在の人物やお店とは何ら関係はありませんので!!!
by meruchiko | 2010-01-31 00:00 | 事件 | Comments(0)